一人飲み女子①

一人飲みの話。

 

 

この頃、自分の時間に余裕が出来たので一人で夜の街に繰り出してみた。

 

 

この地に引っ越してきてもうすぐ2年。

今まで街の中心部をゆっくり歩くこともなかったのであらためてみてみると飲み屋の多さに驚いた。

 

 

昼間は閑散としている商店街もそれなりに賑わい始める20時過ぎ。

 

 

大通りから一本それたところにある大衆居酒屋の引き戸を意を決して開けてみた。

開けた瞬間、店員含め全員の珍しそうな視線を浴びる。

 

 

この瞬間がとても苦手で一人で入ることを躊躇うのだが、これを乗り越えればこっちのもの。

現代には手持ち無沙汰を解消してくれるスマホもある。

とりあえず、ビールとオススメの刺身を頼んでスマホに目を落とす。

 

 

30分ぐらい店内の様子を伺いながら2杯目のハイボールを飲んでいると、大将が話しかけてくれた。

 

 

「珍しいね、女性一人で」

 

 

きっかけはこれで十分。

 

 

そこからはちょっと誰かに言いたかった自分の話や、大将の昔話など話は盛り上がり、気づけば店内にいる客は私だけになっていた。

 

 

その日限りになるかもしれないし、また来るかもしれない。

変な気を使わずできる会話はとても心地よいものだ。

 

 

刺身2人前とビール1杯ハイボール3杯飲んで3000円ちょっと。

 

 

安くて美味しい、そして楽しいとてもいい店だった。

 

 

もう一軒行きますと言うと、気をつけて楽しんでおいでと

大将と大将のお母さんが笑顔で送り出してくれた。

 

 

 

少し、今住むこの街が好きになった瞬間だった。