1人飲み女子②
1軒目の居酒屋を出ると、ちょっと駅から離れたレジャービルへ。
次はBarに行ってみよう。
中が伺えないドアに緊張するもゆっくりノブを引くと小気味良い鈴の音とマスターが出迎えてくれた。
中には1組のカップルと1人の女性。
静かだが雰囲気は和気藹々としている。
きっとこの空気感はマスターの雰囲気なんだろうなと思う。
心地良い空気に出迎えられ、他のお客さんとも一言二言交わしながら飲んでいると、
私以外のお客さんが帰り、今度は常連らしきおじさんがやってきた。
「お嬢さん、好きなもの1杯どうぞ」
本当にドラマみたいにこんな紳士なおじさんいるんだと思いながら、
しばらく喋って、おじさんは2杯ほど嗜んで颯爽と帰って行った。
ああ、こういうのが粋な飲み方なんだなと思った夜。
家で彼氏と住んでいた時、ずっと押し付けられていた当たり前のせいで凝り固まっていた心が少しほぐれた気がした。
ああ、私は良い人たちに囲まれている。
一人飲み女子①
一人飲みの話。
この頃、自分の時間に余裕が出来たので一人で夜の街に繰り出してみた。
この地に引っ越してきてもうすぐ2年。
今まで街の中心部をゆっくり歩くこともなかったのであらためてみてみると飲み屋の多さに驚いた。
昼間は閑散としている商店街もそれなりに賑わい始める20時過ぎ。
大通りから一本それたところにある大衆居酒屋の引き戸を意を決して開けてみた。
開けた瞬間、店員含め全員の珍しそうな視線を浴びる。
この瞬間がとても苦手で一人で入ることを躊躇うのだが、これを乗り越えればこっちのもの。
現代には手持ち無沙汰を解消してくれるスマホもある。
とりあえず、ビールとオススメの刺身を頼んでスマホに目を落とす。
30分ぐらい店内の様子を伺いながら2杯目のハイボールを飲んでいると、大将が話しかけてくれた。
「珍しいね、女性一人で」
きっかけはこれで十分。
そこからはちょっと誰かに言いたかった自分の話や、大将の昔話など話は盛り上がり、気づけば店内にいる客は私だけになっていた。
その日限りになるかもしれないし、また来るかもしれない。
変な気を使わずできる会話はとても心地よいものだ。
刺身2人前とビール1杯ハイボール3杯飲んで3000円ちょっと。
安くて美味しい、そして楽しいとてもいい店だった。
もう一軒行きますと言うと、気をつけて楽しんでおいでと
大将と大将のお母さんが笑顔で送り出してくれた。
少し、今住むこの街が好きになった瞬間だった。
人を好きになるには忘れることが大事
私は人間が好きだ。
心無い噂を流されて会社を辞めたこともある。
性格が少しキツイこともあって衝突することもたくさんある。
だけど、人間が好きだ。
親しい人、尊敬する人の中に醜い部分が見えたり、
嫌いな人の優しいさに触れたり、
白黒つかないところが面白くていい。
嫌いになりきれずに悩み、自分を振り返って考える。
幼い頃は人見知りで大嫌いだった人との関係を作ること。
今は、人との関係を作ること、その関係の中で生きている。
東淀川駅は東淀川区にない
私はこの10年で5回引越しをしてきた。
それぞれ大好きだった街を順番に紹介して行こうと思う。
まず、1回目の引越しは実家を出て初めての一人暮らしをした東淀川。
阪急電鉄と地下鉄今里筋線が通り、私が住んでいた当時はまだなかったが現在JR淡路駅が出来たのでJRも通っている。
当時住んでいたところの最寄りは東淀川駅だったが東淀川駅は淀川区に所在しているらしい。
信号待ちしていると喋りかけてくおばちゃん、引越ししている側から荷物をパクっていくおっちゃん。
田舎から出てきた私にはいろいろ衝撃なことばかりだった。
学生だった当時は飲みに出歩くか、私のマンションで家飲みする毎日だった。
学校に残って喋ったり、梅田へ遊びに行ったり、今思うともったいないぐらいに時間を持て余していた。
少し特殊なバイトをしていたから、変な大人ともたくさん出会って今の私の70%ぐらいの性格がきっとこの時に形成されたと思う。
まさに青春時代を過ごした街。
阪急淡路から長岡天神まで通いバイクの免許をとったのはこの頃。
取って以来一度も乗ってないバイク。
もう一度乗ってみようかと思う今日この頃。
誕生日
今日は父の誕生日。
生きていれば56歳。
9年前の夏、交通事故で父を亡くした。
高校生最後の夏休みも終わる頃。
2人でサッカー観戦に行った。
帰りにコンビニに寄ってアイスクリームを食べた。
普通の夏休みを送っていた。
だけど、次の日父は帰ってこなかった。
もし、生きていたらどんな会話をしているだろうか。
車が好きだった父に私が今同じ車に乗っていると言ったら驚くだろうか。
私は父が好きだ。
だから、ずっとどこかに面影を探している。
好きなモノを真似して、行動を真似して。
好きになった人に重ねて。
こう言うのを拗らせてると言うのだろうか。
来年は10年目の夏。
普通の夏を送れるだろうか。
同棲解消記念日
はじめまして。
彼氏が地下アイドルにハマって家を出て行った記念にブログを始めようと思います。
同棲2年目、今年中に結婚しようなんて話をしていたのはつい1ヶ月前。
人って短期間にこんなに変わるものかと驚いたのと同時に、出会った当時、毎日結婚したいと言い、連絡が疎かになると嫉妬に狂っていた彼氏を思い出した。
当時の彼氏は別居中だが既婚者。
離婚して一緒に住もうという彼氏の言葉を嬉しく思いつつも、本気にとって良いものかと一歩引いて見ている自分もいた。
しかし、離婚は成立し、居住地も新たに同棲生活はスタートした。
その頃には嫉妬狂いの彼氏も落ち着きはじめ、不規則な私の仕事に不満はありつつも、休みの日には2人で出かけ普通の同棲カップルの日常を送っていた。
フットワークの軽い私は新しい職場、新しい土地でもすぐに馴染み、飲み友達や信頼できる上司ににも恵まれた。
今思えば彼氏は私のこういう性格に置いてけぼり感を感じていたのかもしれない。
頑固でストレスを溜め込むタイプの彼氏。
別居中は元嫁とうまく行ってないストレスを発散するかのように私に入れ込んでいたんだと今なら思う。
職場でうまく人間関係を築けず、家では私を貶すようになった。
笑って言い返していたが、きっともう恋愛の対象ではなくなっていたのかもしれない。
そんな時に出会ったのが地下アイド。
最初は曲を聞いていると元気になると言うぐらいの感じだった。
気づけばネット配信は片っ端からチェックし、西へ東へイベントに出かけ、握手会、チェキ会、完全にハマっていった。
熱しやすく冷めやすいとはちょっと違うが彼氏の根本の性格を感じた矢先だった。
置き手紙を残して家を出ていった。
お金が工面できないから別れようというような内容の手紙だったが、
アイドルにお金を使いたい、自由に会いに行きた。
と言うようなことが滲み出ていた。
ああ、きっと次に入れ込む対象が出来たんだ。
一応引き止めてはみたけど、どこか諦めがついていた。
私はこの捻くれているのか純粋なのかわからない、私をいつも困らせる彼氏の性格が好きだった。
よく拗ねるし、落ち込むし、でもよく笑う。
まあ、こんな感傷的になっているのは私だけだろう。
きっと彼はもう次はいつアイドルに会えるかしか考えてないだろう。
付き合った当初毎日一緒にいたいと私に言っていたあの時と同じキラキラした目で。